今回はお花ではなく
まっすぐに立てたものをそのまま描くため
気持ちに余裕があったので(笑)
描く手順を写真に撮ってみました。
まずはデッサン。
植物の立体感が強調されるよう
斜めから光があたるようにします。
この場合は、左斜め前から光があたっているので
右側に影がおちています。
次にデッサンしたものをトレースし
本番の水彩紙に転写します。
本番の紙にいきなりスケッチすると
鉛筆で描いたり消したりするうちに
紙の表面が毛羽立ってしまうのを防ぐため
少し手間ですが、トレースします。
2017.8.24
下絵ができたら
ベースの彩色をほどこします。
1回目は
全体にイエロー系の色をフラットに塗ります。
樫の木の葉っぱは
鮮やかグリーンではなく
オリーブがかっていたので
澄んだ黄色ではなく
山吹色のような
少し茶色の入った黄色を淡くのせてみました。
2017.8.25
2回目は
表葉の中でも明るいところに近い色を作り
塗っていきます。
光が斜めからあたっているので
主脈を挟んで左右で陰影が違っています。
面での濃淡を意識して
描いていきます。
表葉と裏葉とでは色味を少し変えて
この段階から描き分けていきます。
1回目、2回目では
大きな面でとらえていく感じなので
描く面にまず水を塗って
その上に色を広げていく
ウェット オン ウェットで描いています。
2017.8.27
3回目は
もう一段階濃い色を作り
細部を描き分けていきます。
葉脈や鋸歯を意識するのも
この段階からです。
側脈で仕切られたマスごとに陰影を意識したり
葉と葉の重なりを明確にしたり
濃い色を付けていいところと
淡い色で残さないといけないところを
注意しながら描きます。
2017.8.28
4回目
よりリアルな色に近づけていくために
更に濃い色で濃淡を描き分けます。
2017.8.29
5回目
葉っぱだけを完全に仕上げてしまわずに
枝や葉柄(葉っぱの付け根)、腋芽にも
色を付けていき
葉っぱの強さに見合うバランスに
仕上げていきます。
枝と葉柄がクロスしていたり
枝に小さな白い点があったり
描きにくい部分は
細かくマスキングして
なるべく筆を躊躇せず動かせるようにします。
ここでだいたい8割がた完成!
2017.8.30
最終段階
ここからは、
更に細部の描きこみ
面での陰影の加減を
再調整しながら
全体のバランスを整えていきます。
一つの葉っぱだけ見つめ過ぎず
枝全体も見つつ
何度も何度も筆をいれます。
そして
完成です!
2017.9.1
樫の木の枝は
今はもうカリカリになっています。
だけど、絵の中では
瑞々しいままで存在しています。
実はボタニカルアートを始めるまで
リアルに描くことに
あまり興味がありませんでした。
本物の持つ存在感やエネルギーには
勝てないと思っていたからです。
けれど、実際に取り組んでみて
いろんなことに気づかされます。
生きているものは
時間の経過とともに変容していくけれど
絵を描くことによって
好きだった瞬間を残しておくことができます。
嵐で拾ったこの枝を
花瓶に飾ろうとは思わなかったけれど
描いた樫の木の枝は
額装して飾りたくなってきました。
対象と向き合っている時間の分だけ
樫の木の枝のことを好きになっているのです。
そしてそれは、
あの樫の樹でもなく
その樫の樹でもなく
既にわたしの樫の木なのです。
リアルさを求めていながら
そこには私の感情が多分に反映されています。
絵を描くことの楽しさって
こういうことなのかなぁ・・・と
今更ながら思うのです。
2017.9.3