メタリフェルホソアカクワガタを描き始めました。
体長と同じほどの長さのある大顎のフォルムと
カーヴィング(木工彫刻)のような質感が実にイイ。
美しさに飲み込まれて
描きたい気持ちがわいてきました。
2018.9.18
画像からデッサンをする際、
私なりの楽しみ方があります。
まずはとにかく見えたままに
描くようにしています。
“ここに何か見えるけど、これ何???”
ということはよくあります。
植物の場合は、
自宅にて目の前に実物をおいて描くので
わからなければ裏返してみたり、
虫眼鏡で見たり
写真を撮ってPCで画像を拡大してみたり
観察することと、描くこと、
時には調べることも並行して、
疑問を解決しながら描いたりするのですが
昆虫の場合は、
家に標本を置いているわけでは無いので
標本のある場所に行って描くわけです。
ただし、昆虫の裏側を直視することに
どうしても抵抗があり苦手な私は
標本と対面している間は
どちらかというと実物の美しさや
立体的な存在感を感じることに重きを置き
出会った時の印象や面影のようなものを
きちんと心に残しておくようにします。
そして資料としての写真撮りや採寸はしておいて
自宅にて画像をもとにデッサンをしています。
そんな中、私なりに楽しんでいるのが
『無知からくる勘違い』です。
昆虫にきちんと向き合ったのは今年からなので
ほとんど知らないことだらけの私が
描いていて不明点にぶつかっても
とにかく見たままに突き進めば
当然いろんな勘違いをします。
それでもあえて全体を描いたのち
あらためて、対象のことをしっかり調べます。
答え合わせみたいな感じです。
正体がわかると、笑ってしまうことも多いのです。
例えば、クワガタでいうと・・・
上から撮影した画像を見ていると
前脚は胸部から出ているけど
中脚と後脚は腹部から出てるのかなぁ?”
と思うわけです。
こんなことは、昆虫をわかっている人は
まず思わないでしょう・・・。
描き終えた後に、
クワガタの体の構造を調べると
実は胸部は3つに分かれており
上から見ていかにも胸部は前胸
そこから下は翅(はね)で覆われて隠れていますが
中胸と後胸そして腹部が存在し
胸部はず~いぶんと長いのです。
裏側から見るとよくわかるのですが、
後脚がついているところまでは後胸で、
昆虫の原則通り
脚はすべて胸部についています。
そして後脚が終わったあたりから
短めな腹部が始まります。
これまでに描いたトンボも蝶も
胸部が短く、腹部が長かったので
勝手に翅より下は腹部だと思っていたのでした。
そうすると・・・、
今までウェスト高めに見えていたクワガタが
めっちゃ下半身短めの昆虫に思えてきます。
人間の美的基準に照らし合わせるのは
おかしな話なのですが
そうやって勝手な空想をめぐらすことが、
私としては、デッサンの副産物として
面白かったりします。
また、勘違いが覆されるインパクトで
本来の構造が記憶に定着しやすい気もします。
ただ、こういったトンチンカンなことも続けていくと
それなりに自分自身の知識もじわじわ増えてきます。
数か月前より、昆虫のこと
ちょっとだけ知っています。
2018.10.3
デッサンしたものを
水彩紙にトレースします。
私は実寸で描いているため
このクワガタで言うと9cm弱です。
そのため、デッサンしたものに
あまり細かい部分まで描きこむと
かえってトレースしづらいため
脚のツメや節の特徴など細かい部分は
水彩紙に直接描きたすようにしています。
2018.10.11
次にベースを塗ります。
ベースの色は全体の中の一番明るい部分を基準に
色を決めます。
このクワガタでいうと、
大顎の右側内側に一番光が当たっているので
この部分を基準とします。
また実際の色より若干明るめの色にします。
透明水彩は必ず下に塗った色の影響を受けるので
のちのち暗くすることはできても
明るくすることはできないためです。
次におおまかな陰影を全体につけていきます。
一部分だけ集中的に仕上げると
バランスが崩れてしまうので
必ず全体的に陰影をつけます。
2018.10.13
さらに陰影をつけます。
1回目に大まかな陰影をつけているため
陰影の方向性は明確なので
さらに丸みを
さらに尖りを
さらに輝きを
といった感じで
陰影をつけていきます。
2018.10.16
そして完成。
メタリフェルというのはメタリックなという意味で
実際にはもう少しメタリックなツヤ感がある
クワガタが多いようです。
ただ、この子については、個体差なのか
木質感のある渋さを持ち合わせていたのが
魅力です。
勇壮かつスマートな大顎の表現には
ちょっとこだわりました。
2018.10.17